スパイス&ハーブ
牛乳×スパイスで作る自然な睡眠薬「ムーンミルク」のレシピ
公開日: 2025.08.06 更新日: 2025.08.06
夏の間は日の出が早いこともあって長く寝られないけど、なんだか疲れが溜まる。一方、冬はいつまでも暗いからたくさん寝てしまって、元気があり余って身体がだるい。そんなことはないでしょうか?アーユルヴェーダでは、体力が半分くらいになる夏はたくさん寝て、体力が満タンで誰もが元気な冬には短めの睡眠を心がけるように伝えています。
なかなかそんなふうに思い通りにならないのが人間ですが、睡眠はこのように、誰でも「何時間寝れば良い」ということはなく、体力に合わせて適切な時間を取り、それでしっかり身体を回復させる大切な時間です。
寒い季節や冷え性さん、Vata体質の方に多い「寝つけない」「夜中の中途覚醒」「朝疲れてる」
寒い季節、または冷え性さん、特にアーユルヴェーダのドーシャでいうとVataが優勢な方に多いのが
- 寝つけない
- 夜中の中途覚醒
- 朝起きた時に疲れている
というもの。
寝つけない理由は、次に出てくる暑がりさんと違って「心配」「不安」などといったまだ起きてもないことなどへの考えごとが原因になっていることが多いです。
また、せっかく寝ても夜中に途中起きてしまって、また寝るけどまた起きる。この繰り返し。
たとえ、中途覚醒の自覚がなくても、全体的に眠りが浅いので「結構寝た気がするんだけど、朝起きた時に疲れている」という方が多いです。
暑い季節や暑がりさん、Pitta体質に多い「寝つけない」「昼間に眠くなる」
暑い季節や、暑がりの方、Pittaが優勢な方に多いのは
- 寝つけない
- 昼間に眠くなる
といったお悩み。
寝つけない理由は、その日起きたトラブルや、明日の仕事など、何か責任感を感じている課題に対して考えを巡らして頭が熱くなっているからです。これはVata体質の「寝つけない」とはちょっと違いますね。
また、ちゃんと寝られたとしても、寝ている間も交感神経が優位なままで、どこか考え事をしながら眠っているので、睡眠の質が低下し、日中にどうしても眠くなるという方も多いのではないでしょうか。
睡眠の質改善には「油性」「重性」「冷性」を味方にして。
こうした睡眠の悩みを良くしようとアーユルヴェーダのレシピを考えるなら「油性」「重性」「冷性」といった性質のものを中心に据えて作っていきます。
性質とは、アーユルヴェーダで命あるもの全てに定めているもので、温性か冷性か、重性か軽性か、などといった性質の組み合わせがたくさんあり、それを知っていると対象を摂った時に自分の体がどういう状態になるかがわかります。
アーユルヴェーダのケアは「増えすぎたものと異質のものを摂ると症状が鎮静する」が基本なので、乾燥しているなら油性を、冷えているなら温性を、ふわふわ軽くなっているなら重性を、頭がかっと熱くなっているなら冷性を、ということになります。
一つ注意したいのは、性質は物理的に温かいか冷たいかではなく、本来の質のことを指します。なので頭がかっと熱くなっている時に、たとえばビールを飲んでしまうと、物理的には冷たくてもアルコールは温性なので、ますます熱くなって調子が悪くなってしまう。
その食材などが本来持っている性質をある程度覚えておくことが大切になります。
睡眠の悩みは、Pittaが優勢なら頭部に熱が集まって熱くなり、クールダウンできなくて寝つけない状態。Vataが優勢なら冷えて乾燥し、ふわふわ軽くて考えごとばかりしてしまい寝つけない状態を指します。そのため、こうした熱に冷性を与え、ふわふわ軽くて考え事が止められない状態に対して重性を与えると、落ち着いて眠ることができるのです。
ややこしい書き方をしてしまいましたが、こんな時、Vata優勢でもPitta優勢でも味方になってくれるのが「牛乳」です。
牛乳は冷性・重性・油性。スパイスを組み合わせてドーシャとバランスを取ろう
牛乳はアーユルヴェーダで最も有益な食材の一つ。塩や酸味、魚と組み合わせると消化に重たくなるため、基本的には単体で摂るか、甘くして摂ることが勧められますが、身体をクールダウンさせ、程よい重みを与え、油性で滋養する素晴らしい食材です。
冷性が冷え性のVataに良くないのでは?と思われがちですが、氷のように冷やすわけではなく、程よくクールダウンするだけなので、冷たい状態で摂らないように心がければ、Vata性の悩みでも、Pitta性の悩みでも牛乳は良い働きをしてくれます。
そこで、牛乳とスパイスで作る眠る前の飲み物「ムーンミルク」を作って飲みましょう。スパイスと組み合わせれば、よりドーシャへアプローチした鎮静レシピができあがりますので、次のとおりご紹介します。
基本のレシピ:牛乳+ギー+カルダモン(200cc+小さじ1+1粒)

まずは基本の作り方。
牛乳は粘性があり、体内の通り道で詰まりやすくなるため、カルダモンシードを必ず一緒に入れて温めます。ギーもほんの少しかけて、油性を補って。
&ターメリック小さじ1/2杯で「定番ゴールデンミルク」

基本のレシピでミルクを温めて、鍋の淵がほんの少し煮え始めたらストップ。ターメリック少々を加えて馴染ませたら「定番のゴールデンミルク」のでき上がり。睡眠の質を良くする以外にも、
- 美白
- 抗炎症
- 抗菌
などが期待できるので、毎日飲んでもいいくらいです。
&ナツメグ小さじ1/5杯で「自律神経鎮静」

基本のレシピに、ほんの少しナツメグを入れると、特にVata体質の方におすすめ。自律神経を鎮静してくれます。感情が不安定になっていて、不安や心配事がおさまらない時には特にいいかも。ただ、ナツメグの量は小さじ1/5杯程度で大丈夫。ナツメグは入れすぎると毒なので、気をつけて。
&長胡椒少々で「末端冷え性解消」「デトックス」

基本のレシピに長胡椒をすって入れてみましょう。長胡椒は末端まで隅々まで届き冷え性を改善するのに、Pitta体質の人でも熱くなりすぎることがありません。また、血圧降下作用があったり、デトックスを促す効果も期待できるので、何日間か集中して飲み続けるのも良さそう。
長胡椒も、初めからたくさん入れすぎず、少しずつ量を増やして自分の好みの味を見つけるようにしてください。
ご紹介したスパイス以外にも、シナモンスティックを砕いて温めたり、ジンジャーパウダーを入れるのもおすすめです。身近なところだと、胡椒でもいいですね。
昇った熱が冷めて、身体が程よく重くなる。これで眠れる。
アーユルヴェーダでは、良質な睡眠には「身体が程よく重たくなっていること」が大切だと伝えています。Vataが優勢な人が夜の眠りが浅く、何度も起きてしまうのはなぜかというと、もともと身体が軽く冷えているので、ベッドに沈み込むことができずどこかふわふわした状態になっているからです。
子どもの頃、海やプールで思い切り遊んで帰ってきたあと深く眠ったことを「泥のように沈み込んで寝た」と言ってましたよね。それくらい身体を重く感じて、安心して眠れるのが理想です。
ただし、Vataが優勢で身体も軽い上に心配事が多かったり、Pittaが優勢で頭に熱が昇り考え事が多かったりすると、上手にベッドに沈み込むことができません。
そこで、今回ご紹介した「牛乳」の「冷性」が頭をクールダウンし、「重性」が程よい重みを与え、「油性」で安心感を与えることができるというわけ。もともと、夜眠る前のホットミルクは睡眠の質を良くするイメージが強いですが、それはこういう仕組みだったんですね。
牛乳は単体で、温めて摂ろう。
最後に注意点が二つ。
冒頭でもお伝えしたとおり、牛乳は塩や酸味、魚との組み合わせによって消化に重たくなるので、食事として牛乳を摂ることはNGとされています。そのため、摂る時は食事とは時間を開けて、単体で摂るようにしましょう。夜寝る前のホットミルクがちょうど良さそうですね。
また、牛乳は温めて飲んでも冷性の性質は変わりません。冷たいまま飲んでしまうと、身体が必要以上に冷えてしまうので、必ず温めてムーンミルクを作ってくださいね。
いかがでしたでしょうか?
肌寒くて風が強い季節も、夏の暑い季節も、誰かしらが睡眠の悩みを抱えているもの。
牛乳とスパイスを味方につけて、ほっと安心してよく眠ってくださいね。
睡眠によって体力がしっかり回復するので、夏のレジャーも、深まる秋の景色も、これまで以上に存分に楽しんでほしいなと思います。