article

アーユルヴェーダが生まれたインドは、菜食レシピが豊富。人口の20-40%がベジタリアンとされ、世界一のベジタリアン大国でもあります。これはヒンドゥー教やジャイナ教といった宗教の教えである「アヒンサー(非暴力」を重んじ、宗教上の理由でベジタリアンを貫いている方が多いためです。

一方、日本は本来、魚食の国。ただ、他の国の文化を軽快に受け入れ色々試しては自国のアイディアに変換するのが得意なVataPitta体質(?)なのか、日常の食卓では魚だけでなく肉食も当たり前だし、パンもパスタもアヒージョも酢豚も肉まんもシュークリームもスコーンも、なんでも食べますよね。もはや何が日本食なのだろう?!と混沌とする感じが、結局、現代の日本食なんだろうと思います。

なんでも気になるものから色々食べて、一方で「より健康になるには結局何を食べたらいいのだろう」という不安も好奇心も抑えきれない私たちですので、アーユルヴェーダのあるインドの「菜食」は当然気になる。ただ、多くの方が思っているのではないでしょうか。

肉とか魚食べなくて、どうやってタンパク質を摂っているのだろう...元気はどうやって保ってるの?

これは私の母が、豆腐の味噌汁を啜りながら言っていたことです。
「ちょっと待ってくれ、今あなたが口の中に入れようとしているものも「大豆」立派な植物性タンパク質だよ。」
そう言いたかったけど、なんとなく面倒くさくなってやめました。

大豆は立派な日本を代表する「ダル(豆)」食材。でももっといい食材がある?

日本では、大豆をさまざまな調理法で食材に変換し、活用しています。豆腐、豆乳、湯葉、油揚げ、味噌、醤油...etc. 大豆を摂っているだけでも、十分なタンパク源は摂取できるのです。つまり、肉や魚を摂っていなければ「元気は保たれないのでは」という不安は心配無用ということになります。

でもちょっと待って。インド人は日本人よりもずーーっと元気なのです。インドに行ったことがない方でも、底知れないインドの地響きを感じているのではないでしょうか。なんかすごく元気そうだし、すごい笑ってそう。GDPも鰻登りだし、貧富の格差もかなりありますが、日本人よりもずっと裕福な方も着実に増えています。

実際に、インドに行った人はみんな口を揃えて言います。

-インドに行くと、自分自身が変わらずにいられない。良くも悪くも。

これは本当のことです。私も14年前にインドに2度旅したことがあり、今年の夏に念願叶って久しぶりに2週間滞在したのですが、若い頃に感じた頃よりもずっと、その実感がありました。アーユルヴェーダを深く知っている今だからこそとも言えます。

今のインドは14年前のインドよりもはるかにパワーを増していて、彼らのパワーの強さでQueenのWe will rock youよろしく、地球全体をブームアップするような力強さ。そんなインド全体から信頼されるモディ首相はもちろん、急成長する企業の経営陣や、アーユルヴェーダ界隈の方々は総じてベジタリアンで、アーユルヴェーダをフォローしている方も多いのです。

インドには大豆を使ったレシピはほとんどありません。では、何をタンパク源として摂って食べて、そんなに元気でいられるのでしょう?その豆は「ムングダル(緑豆)」です。豆を総称してインドでは「ダル」と呼びますが、ダルといえばニアリーイコール、ムングダルと言っても過言ではないほどよく食べられている豆です。

「ダルバート」という言葉を聞いたことはないでしょうか?これはインドのお隣、ネパールの料理の名前で「ダル(豆)を食べるためのワンプレート」です。
その名の通り、ダルバートには豆で作ったカレーがワンプレートの中に色々載っており、豆の種類はムングダル(緑豆)・マスールダル(レンズ豆)・チャナダル(ひよこ豆)などなど様々。仏教国ということもあって、インドよりも滋味深〜い味付けで優しく、ネパール料理大好き!ダルバートを食べると懐かしくて美味しくて、安心する。そういう方が多いですね。

しかし私は、そうしたさまざまなダルの中でもムングダル(緑豆)を推したい。このムングダルこそ、インド人の地響き鳴らす元気の底力の正体だからです。

大豆にはなくて、ムングダルにあるもの。緑豆もやしじゃダメなの?

大豆を使った日本食は、それはそれで素晴らしいものです。
アーユルヴェーダでは「慣れ親しんだ(=サートミヤ)」を重んじているので、遺伝子的に慣れたものの方が消化に良く、結果的にしっかり栄養になるという考え方を大切にしています。

ただ一方で、豆腐や豆乳などを作る日本のダル、大豆は、性質としては「冷性」で「乾性」。身体を冷やし、乾燥させる食材、つまりVataを増やしやすい食材です。世界の病気の原因の8割がVata性とされているくらいなので、できるだけ工夫して食べたい。

冷やし、乾燥させるのだから、豆腐を食べるなら生姜をすりおろした湯豆腐、豆乳を飲むなら温めて豆乳スープにした方がマシになります。でも実際には居酒屋の注文で良かれと思って冷奴を食べ、コンビニで豆乳を飲んで「イソフラボン...」と呟きながら一気飲みしてないですか?
(ちなみにですが、イソフラボンは冷たいまま摂っても消化代謝されないそうですよ)

このように、大豆自体はもちろん良いものだし、日本人にとっては慣れ親しんだ食材ではあるのですが、摂り方はちょっと工夫した方が良いし、工夫がなければ「消化に重たい」食材になり得るのです。「スムーズに消化してこそ自分自身の栄養へと代謝することができる」というのがアーユルヴェーダの考え方を重んじたいというところです。

元々消化に良いダル(豆)を用いて、消化に良いことを意識したアーユルヴェーダレシピの方がより良いタンパク源を作るということになります。

そこでおすすめなのがインド人の主食、ムングダル。皮付き、皮無し、ひきわりと色々な形態があります。

こちらはアリサンの皮付きホールムングダル

このように小さくて火の通りが早いため「そうだ、ダルカレーを作ろう!」と思い立った場合、皮無し・ひきわりのイエロームングダルであれば「浸水なしでわずか20分」で調理が可能なところも推している点です。

こちらはアンビカの皮なし・ひきわりのイエロームングダル

アーユルヴェーダ的な視点も含めれば、その効果とは...

  • 高い栄養価
  • 疲労回復効果
  • むくみの改善
  • 消化に軽く、身体に軽快さを与える
  • Pittaを憎悪せず、KaphaとVataを鎮静する

などなどを期待することができるのです。すごいですよね。

ちなみにこのムングダル、私たちの食卓にも身近な「もやし」の正体でもあります。パッケージをよく見ると「緑豆もやし」とある。ただ、アーユルヴェーダではせっかくさまざまな効果のあるムングダルでも、発芽してしまうと「無益」な食材に振り分けています。

無益だからといって摂ることに意味がないわけではなく、無益だからこそ摂った方が良い体質や季節があるのですが、それはまた別の話。今回はムングダルを消化に良く有益な状態で摂って、元気を底上げしよう!ということをお伝えしています。

馴染みやすい味で実践できる!3つの「ムングダル」のレシピ

ここまで紹介した通り、ムングダルはとっても有益な食材。すぐにでも試してもらいたいくらいですが、前述した通り、アーユルヴェーダでは「慣れ親しんだ(🟰サートミヤ)」ものの方が消化しやすいとしています。

ムングダルを摂ってみたら、実際には消化に重たく感じたり、お通じがあった際に便の中に緑豆が丸ごと入っていた...なんてことに気づいたことも少なくないのでは?

それもその通り、豆食材は大豆も含めお腹にガスを発生させやすく、工夫して調理をしないとかえって消化に重たくなることがあります。それはムングダルも同じこと。

そのため、ムングダルの料理を実践する際にも、日本人にとっては慣れた食材とはいえないので、スパイスやギーを含めた調理法を工夫してあくまで「消化に良く」摂ってしっかり元気になってほしい。

というわけで、今回はムングダルを用いたおすすめアーユルヴェーダ・レシピを3つご紹介します。

1、ダルカレー

ネパールのダルバート同様、インドのベーシックな菜食プレートはこんな感じで、ダルカレー(写真右下)が中心にあり、それをライスやチャパティ(全粒粉のパン)そのほかの野菜のお惣菜、ピクルスやふりかけと共に食べるのが日常です。

これは私が実際にアーユルヴェーダ治療院で作っていただいたお昼ご飯ですが、私たちが普段はご飯・味噌汁・お惣菜1つの「一汁一菜」で済ませることも多々あるように、一般市民の毎日の食材は、ご飯かチャパティ、それとダル、そしてちょっとしたお惣菜一種で終わることもあります。でも、ダルは必ずと言っていいほど、ある。

いわばダルカレーはインド人にとっての「味噌汁」のような食材。これさえあればご飯がススムし、毎日の元気が保たれるのです。

その作り方はとっても簡単。このレシピでは浸水なしで作れる皮なし・ひきわりの「イエロームングダル」を用いた作り方をご紹介します。

材料(4人前程度)
  • イエロームングダル(皮なし・ひきわりの緑豆)...140g
  • 玉ねぎ...1/8個
  • 生姜...3g
  • ニンニク...2g
  • ターメリック...2g
  • 岩塩...2g
  • ギー...10g
  • クミンシード...2g
  • マスタードシード...1g
作り方
  1. イエロームングダルをサッと洗い汚れを落とし、ざるにあげたら5倍ほどの水と共に鍋に加えて中火にかけます。豆の花が開き、ぐだぐだに煮えるまでしっかり煮ます。普通の火口で15分ほどです。
  2. 1の間に玉ねぎ・生姜・ニンニクをみじん切りにしておきます。
  3. 1に2とターメリック、岩塩を加えてさらに5分ほど煮込みます。
  4. 鍋の中が一体化したら、タルカパンもしくは小さな目玉焼きのフライパンの端っこにギーとクミンシード、マスタードシードを加えて、テンパリングして3の鍋に入れて完成です。
アレンジについて
  • 玉ねぎやニンニクは「鋭性」のためヨーガの修行者や、アーユルヴェーダでも特にサットヴァに仕上げたい場合は省くこともあります。必ずしも入れる必要はありません。同様にトマトもサットヴァな食材ではないため、入れなくてもいいのですが、入れるとそれはそれで旨みになるため好む方は1/8個程度、3の段階で入れるのもおすすめです。
  • クミンシードとマスタードシードの他に、赤唐辛子を1/4本〜1/2本程度入れると、より身体が温まります。これもお好みで。
  • これはベーシックで簡単なダルカレーのレシピです。皮付きホールの緑豆で作るダルカレーもあるし、油と共に煮込むダルカレーのレシピもあります。日本の味噌汁にも地域ごとにレシピがあるように、インドにも本当にさまざまなダルカレーがあります。ぜひ色々調べて試してみてね。

2、キチュリ

アーユルヴェーダといえば言わずもがな、というほど有名なレシピ「キチュリ」これはダルと米で作るシンプルな粥です。インドでは風邪を引いた時だけではなく、ちょっとお腹が重たい時、お腹を休めたい時、疲れた時、呼吸のように自然と食べる料理です。

材料(4人前程度)
  • イエロームングダル...1/4cup
  • バスマティライス...1/4cup
  • 生姜…2g
  • ギー…15g
  • クミンシード...1g
  • ターメリックパウダー...2g
  • コリアンダーパウダー...1g
  • 岩塩…3-5g
  • 黒胡椒…お好みで
作り方
  1. イエロームングダルとバスマティライスをざっと水で洗って、ザルで水をこす。(浸水不要)
  2. 深めの鍋に1を入れ、5倍の水を足して中火にかける。沸騰し、アクが出てきたら弱火に落としてアクをすくう。
  3. 茹でている間に生姜をみじん切りにする。
  4. 豆が指で取って潰せるくらい柔らかくなるまで茹でたら、とろとろのお粥程度になるまで水分を少し足して調整する。岩塩、黒胡椒、ターメリック、コリアンダーパウダーを加えて木べらで混ぜながら馴染ませる。
  5. タルカパン(小さな目玉焼きフライパンとかでもOK)にギーと生姜、クミンシードを入れて温め、テンパリングしたら4に加えて仕上げる。
アレンジについて
  • ダルカレー同様、キチュリも様々なアレンジレシピがあります。ご紹介したのは一番簡単な、すぐできるレシピです。
  • これに玉ねぎ1/4個・ニンニク1かけらの微塵切り・トマト1/8個のカットを入れても美味しい。
  • 地域によってはにんじんや大根を小さくカットしたものを加えることもあるし、eatreat.の春の料理教室ではほうれん草ペーストにして緑色のキチュリをご紹介しています。
  • アスパラガスを茹でて、その茹で汁で煮込むキチュリも栄養満点でおすすめです。こちらでレシピをご紹介しています。(懐かしいな...)

3、パンケーキ

3つ目のレシピはパンケーキ。え、ダルでパンケーキ?!とびっくりするかもしれませんが、インドにはドーサをはじめ、ダルでできるクレープやパンケーキなどのレシピが豊富。工夫すればご自宅にある調理器具でもできますし、お惣菜を包んで食べればお食事クレープよろしく、ブランチやランチにぴったりの料理に仕上がります。何より見た目が可愛くて素晴らしい。

材料
  • 緑豆...50g(皮付きホールの豆を使います)
  • ウラッド豆...30g
  • パクチー...10g
  • 生姜...5g
  • 玉ねぎ...1/8個
  • グリーンチリ...1/4本
  • ヒーング...少々
  • 岩塩...少々
作り方
  1. 緑豆とウラッド豆をたっぷりの水で一晩しっかり浸水する。
  2. パクチーは細かく刻み、生姜・玉ねぎ・グリーンチリはみじん切りにする。
  3. 1をざるにあけて水を切り、まずは豆類だけでフードプロセッサーで撹拌する。
  4. 緑豆がある程度潰れるところまで撹拌できたら、2の野菜類を加え、野菜類の水分でさらに撹拌する。普段のパンケーキを焼くときくらいのどろっとした感じにする。水気が足りなくてそうならない場合のみ、少しずつ水を足して調整する。
  5. ボウルに開け、ヒーングと岩塩を少々加えて泡立て器で混ぜて馴染ませる。
  6. フライパンにギー(分量外)を温め、レードルで4をそっと入れて中弱火で焼く。
  7. 両面が程よくこんがりなるまで焼けて、中も串を刺して生っぽくないところまで焼けたらできあがり。
  8. お惣菜やサンバル、ダルカレーなどを添えて一緒に食べたり、生地に水を加えてもっとゆるい生地にし、クレープっぽく仕上げるのもおすすめです。
スパイスキットで動画を視聴したり、実際にeatreat.の料理教室に参加してもっと詳しい作り方を知ろう

最後のパンケーキはちょっと難しいレシピ。毎年1-4月に開催している「アーユルヴェーダ季節の料理教室春コース」の3月の回でご紹介しているのですが、リアル参加で何枚も焼いてみせても、難しいと感じる方はいるみたい。

上手になるには「練習するのみ」なんですが「作ってみたいけど、自信がない」という方はまずはeatreat.のアーユルヴェーダ季節の料理教室の春コースに参加するか、アーカイブを購入して動画を視聴してみましょう。

eatreat.のアーユルヴェーダ季節の料理教室はこちら>>>

アーカイブですぐに動画を視聴したい!という方はこちら>>>

もしくは、2025年11月には人気のスパイスキットでこの緑豆パンケーキのキットを発売する予定です。スパイスキットにはテキストのレシピカードにQRコードがついていて、これを読み込むと動画にアクセスすることができ、動画を視聴しながらレシピを実践することができるという、大変親切な商品です。アーユルヴェーダ料理を作ってみたいけど、自信がないという方におすすめ。ぜひ利用してみてくださいね。

スパイスキットはこちら>>>
*キチュリのスパイスキットもありますよ!

いかがでしたでしょうか?
さすがベジタリアン大国インドをベースにしたアーユルヴェーダレシピ。
ダルと一口で言ってもレシピが豊富です。

こちらの記事では、ムングダルに慣れていない日本人でも消化に良く、その良さを余すことなく代謝してご自身の滋養にできるように工夫しているので、安心して作ってお召し上がりください。ただし、いくら良いものと言っても、慣れてないものを連日食べたり、そればかり食べては偏ってしまいます。

普段の食事の合間に試して、少しずつ日常の食卓の常連メンバーにして、インド人並みに元気で健やかな暮らしを目指しましょうね。

関連コンテンツ

記事をシェア

more

実際に味わう

からだのなみにのる“わたし”を慈しむためのアーユルヴェーダ料理
毎日のアーユルヴェーダ料理でからだのリズムを心地よく整えてください。

eatreat.SHOP / 公式オンラインショップ

eatreat.SHOPに並ぶアイテムは、ふだんの食卓で取り入れてほしいセルフケアに役立つものばかり。
アーユルヴェーダを初めて作る方のための動画レシピ付きスパイスキットや、人気のミルクシリーズ、お仕事先でも持っていると安心するお茶などバリエーション豊かです。プレゼントにもおすすめです。